「ヤニねこ」炎上騒動と誹謗中傷問題を時系列で整理

パソコンの画面に映るSNSの通知と、その前で頭を抱える漫画家のイラスト ヤニねこ
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「ヤニねこ」の作者に対する誹謗中傷は、2023年8月ごろから始まった。

講談社の法的措置予告、暴露アカウントによる「犯人」特定を経て、2024年3月の『サツドウ』原作者・雪永ちっち氏の死去という結末を迎えている。

本稿では、この一連の騒動を時系列で整理し、何が起きたのかを事実に基づいて振り返る。

発端は何だったのか?「ヤニねこ」への誹謗中傷はいつ始まった

騒動の出発点は、漫画『ヤニねこ』の作者「にゃんにゃんファクトリー」に対するSNS上での誹謗中傷である。

『ヤニねこ』は講談社『週刊ヤングマガジン』で連載されている作品だ。

人間と獣人が共存する架空の街「にゃがみ原市」を舞台に、タバコ好きの猫耳少女を中心としたコメディ漫画である。

もともとTwitter(現X)での投稿がきっかけで商業連載化したという経緯を持つ。

この作者に対して、複数のアカウントから「ヤニねこ邪魔なんで打ち切ってもらっていいですか?」「ヤニねこの作者早く引退しろよ才能ねぇんだから」といった攻撃的な投稿が寄せられるようになった。

さらに悪質なのは、作者の関係取引先にまで「過去に性犯罪を犯した」といった虚偽内容のメールが送られていたという点である。

こうした投稿が始まった時期は、2014年から毎年開催されている漫画賞「次にくるマンガ大賞」の投票結果が公表される直前だったとされる。

同賞の投票結果は公表前に各漫画家へ通知されており、『ヤニねこ』は一般投票部門で12位にランクインしていた。

この通知の翌日あたりから作者への攻撃的な投稿が確認されるようになったと、当時この件を報じたネットメディア各社の記事で伝えられている(通知内容そのものを最初に明かしたのは作者本人のSNS投稿とされる)。

筆者としては、賞の順位発表という業界内のタイミングと誹謗中傷の開始時期が近接している点は、この事件を理解するうえで重要な手がかりだと考える。


講談社の法的措置予告から筆跡鑑定まで、何があったのか

事態を重く見た『週刊ヤングマガジン』編集部は、2023年9月7日にX(旧Twitter)の公式アカウントで声明を発表した。

編集部は「連載中の作品『ヤニねこ』の作者及びその関係者に対しての非常に攻撃的で悪質な投稿が、Xをはじめインターネット上で複数確認されております」としたうえで、弁護士に相談し法的措置を講じる方針を明らかにした。

この発表のあと、講談社宛てに匿名の手紙が届いたという。

手紙には「誹謗中傷は、私がやりました。100万円を支払うので匿名で示談させてください」という内容が書かれていたとされる。

講談社はこの手紙を筆跡鑑定にかけた。

その結果、同じ『週刊ヤングマガジン』で格闘漫画『サツドウ』を連載していた原作者・雪永ちっち氏の筆跡と一致したと報じられている。

講談社の聴取に対し、雪永氏は誹謗中傷を自白し、『ヤニねこ』作者に謝罪したとされる。

この経緯を最初に広く発信したのは、暴露系アカウントを運用するX上の人物・滝沢ガレソ氏だった。

一連の流れを見る限り、匿名の示談申し出という不自然な行動が結果的に自らの関与を裏付ける形になったといえる。

ここは事件の分岐点として押さえておきたいポイントだ。

※画像はAIによるイメージ

雪永ちっち氏はどう反論したのか、動機は何だったのか

雪永ちっち氏は、東京理科大学工学部を卒業後、電機メーカー系の企業を経て外資系IT企業に転職、その後専業の漫画原作者に転身したという経歴の持ち主だ。

『サツドウ』は、暗殺一家に生まれた平凡サラリーマンを主人公にした格闘漫画で、雪永氏はインタビューで「会社漫画」としての側面や、主人公のギャップを見どころとして語っていた。

暴露が広まったあと、雪永氏はXのサブアカウントで反論を行っている。

同氏は「ヤニねこ作者様に一部批判をしたことで講談社側と話し合いはしておりました」として批判自体は認めた。

一方で「スパムを利用した誹謗中傷等はしておらず講談社側にもその件は説明済み」「筆跡鑑定に関してですが私はいっさい関与しておらず」と、スパム業者を使った大量投稿や筆跡鑑定への関与については否定した。

さらに『サツドウ』の打ち切りについても「打ち切りに関する話も出ておりません」と述べている。

「こちらが被害者であり、示談金を受け取ったのは私の方です。ガレソさんにデマを送り、Twitterでも名誉棄損をされました」と、自身をむしろ被害者だと主張する投稿も行った。

誹謗中傷の動機については、同時期に発表された『次にくるマンガ大賞』で『ヤニねこ』が一般投票12位に入った一方、『サツドウ』が圏外だったことから、「嫉妬」ではないかという見方がネット上で広がった。

ただしこれはあくまで推測の域を出ておらず、雪永氏本人が動機を明確に認めた発言は確認されていない。

筆者としては、批判をした事実は認めつつも大量投稿や筆跡鑑定への関与は否定するという雪永氏の主張と、講談社側が筆跡一致を根拠に法的措置の準備を進めていたという経緯には、明確な食い違いが残ったまま事態が進行した点に注目したい。

両者の言い分のどちらが正しいかは、公的な形で決着していない。


講談社との和解協議はどうなったのか、その後の展開

滝沢ガレソ氏の投稿によれば、この誹謗中傷疑惑をめぐって講談社は『ヤニねこ』作者と雪永氏を交えた三者での和解協議を進めようとしていたという。

しかし雪永氏がこの話し合いに応じず、事態は停滞していたと伝えられている。

そうした膠着状態が続くなか、2024年3月23日から24日にかけて、雪永ちっち氏の急逝がヤングマガジン誌面および公式サイトで発表された。

同時に『サツドウ』は未完のまま連載終了となることも公表されている。

死因については公式に発表されておらず、生年月日も公表されていないため正確な年齢も明らかになっていない。

一部のニュースサイトでは、訃報の直前にXのサブアカウントに投稿されていた「人生で学んだことなんて、人生は辛いということだけです」といった内容の投稿が取り上げられ、思い詰めた様子がうかがえるとする指摘もある。

ただし、これらの投稿と死去との因果関係は確認されていない。

訃報が伝えられたあと、滝沢ガレソ氏は雪永氏についての追加の暴露投稿を行った。

これに対しては、亡くなった直後に故人の問題行為をさらに取り上げることの是非を疑問視する声が、SNS上のコメント欄などで多数見られた。

なお、『サツドウ』は単行本の刊行も一時的に停止していたが、2025年6月6日に第4巻と最終巻となる第5巻が同時発売され、シリーズとしては完結する形になっている。


世間の反応と、後年言及された「ドヤコンガ」との比較

この騒動は、匿名掲示板やSNSで大きな注目を集めた。

誹謗中傷を行った側とされる人物が死去したことで、「誰が悪いのか」「暴露は妥当だったのか」という論点をめぐって意見は大きく割れた。

一方では「誹謗中傷をしていた以上、同情の余地はない」とする声があった。

他方では「暴露によって社会的に追い詰められた結果ではないか」「死因も明らかでないのに推測で語るべきではない」といった、暴露を行った側への批判的な見方も根強く見られた。

2024年4月には、別の炎上事案(お笑いコンビ「ドヤ土下座」に関連するとされる「ドヤコンガ」の件)が話題になった。

その際、X上で「ヤニねこ誹謗中傷事件の結末を考えるとあまり祭りにしないほうがいいのでは」と、この事件を教訓として引き合いに出す投稿も見られた。

これは、この騒動が単発のゴシップとしてではなく、SNS上の集団的な追及行為そのものに対する警鐘として、後年まで参照され続けていることを示している。

なお、講談社の他の連載作品の作者も、この時期の一連の報道を受けて誹謗中傷被害を訴える投稿を行っている。

出版社系のSNSアカウントに対する攻撃的な投稿が同誌の複数作品にまたがって問題視されていた点も、当時の記録から確認できる。


記者としての考察:この騒動が示したこと

筆者としては、この一連の騒動が突きつけたのは「暴露アカウントが持つ影響力の大きさと、その検証可能性の低さ」という問題だと考えている。

滝沢ガレソ氏の投稿は、講談社が実際に法的措置を予告していたという事実、そして筆跡鑑定の一致という具体的根拠に基づいていた。

単なる憶測の拡散とは一線を画していた点は、評価されるべきだろう。

実際、講談社側の公式声明という裏付けがあったからこそ、多くの人がこの告発を信じたのだと考えられる。

一方で、雪永氏側が大量投稿や筆跡鑑定への関与を最後まで否定していたことも見逃せない。

講談社が「現時点でお答えできることはありません」という以上のコメントを公式には出していないことを踏まえると、疑惑の全容が第三者に検証可能な形で確定したとは言い切れない。

訃報後に暴露が続いたことで、事実関係の検証よりも感情的な断罪が先行した面は否めないと個人的には感じている。

もう一つ重要なのは、この事件が起きた業界内の構造だ。

同じ雑誌で連載する作家同士が、賞のランキングという可視化された評価軸を挟んで対立する構図は、SNS時代の創作業界に特有のプレッシャーを象徴している。

読者からの評価がフォロワー数や賞の順位という数字で日常的に突きつけられる環境は、以前の紙媒体中心の時代には存在しなかったものだ。

今後の見通しについても触れておきたい。

匿名の誹謗中傷投稿に対する開示請求や法的措置のハードルは、プロバイダ責任制限法の改正などを背景に年々下がってきている。

具体的には、発信者情報開示の手続きが一本化されたことで、以前は数か月〜1年以上かかっていた開示までの期間が短縮される事例も増えているとされる。

出版社側が今回のように早期に弁護士へ相談し、公式に法的措置を予告する対応は、他の出版社・レーベルにとっても一つのモデルケースになったと考えられる。

似た構図としては、著名クリエイターへの誹謗中傷をめぐり所属事務所が早期に法的対応を表明し、投稿者が特定・謝罪に至った事例も過去に複数報じられており、今回のケースはその延長線上にあるといえる。

一方で、暴露アカウントによる私的な追及と、当事者の死という取り返しのつかない結果が近接して起きたことは、SNS上の「祭り」が個人に及ぼす負荷の大きさを改めて示したといえるだろう。


まとめ

『ヤニねこ』への誹謗中傷は2023年8月ごろから始まり、同年9月に講談社が法的措置を予告、11月に滝沢ガレソ氏が『サツドウ』原作者・雪永ちっち氏を犯人として名指しする投稿を行った。

雪永氏は批判をした事実は認めたものの、大量投稿や筆跡鑑定への関与は否定し、自身を被害者だとする主張も行っている。

両者の言い分は最後まで公的に決着せず、2024年3月に雪永氏の急逝が発表され、『サツドウ』は未完のまま連載終了となった(単行本は2025年6月に完結巻が発売)。

この騒動は、SNS上の告発と当事者の死が重なった出来事として、後年も他の炎上事案と比較して語られ続けている。


よくある質問

「ヤニねこ」誹謗中傷事件の犯人は誰だと言われているのか?

講談社の筆跡鑑定により、同じ『週刊ヤングマガジン』で連載していた『サツドウ』原作者・雪永ちっち氏の筆跡と、匿名で送られた手紙の筆跡が一致したと報じられている。ただし雪永氏本人は、批判をした事実は認めつつ、大量投稿や筆跡鑑定への関与は否定していた。

なぜ「ヤニねこ」の作者は誹謗中傷を受けたのか?

明確な動機は公式には発表されていないが、漫画賞「次にくるマンガ大賞」の投票結果で『ヤニねこ』が12位にランクインした一方、『サツドウ』が圏外だったことから、嫉妬が背景にあったのではないかという見方がネット上で広まった。

『サツドウ』は今後読めるのか?

『サツドウ』は雪永ちっち氏の急逝により未完のまま連載終了となったが、単行本は2025年6月6日に第4巻・第5巻(最終巻)が同時発売され、既刊分はコミックスとして刊行が完了している。

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